文月煉のおすすめ本。
Twitterで紹介したものを転載。
1冊につき140字以内の解説を添えて紹介、ってなかなかいい試みなので、今後も機会を見つけて追加していきたいかも。
大量殺人を止めるための殺人は「倫理的」か。そのために脳をいじり、罪悪感をなくすことは?
SFでありながら、「明日にでも起こりそうな」リアルさに、背筋が震える。主人公の葛藤から、目が離せなくなる。
2.いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
「天才で悲劇的な弟」について語る、姉の文章でつづられる、静かで悲しいファンタジー。
本の中に挿入される「弟が書いた物語」の研ぎ澄まされたことばたちに圧倒される。
孤独で美しい完全な物語。
新装版 ルナル・サーガ1 赤い瀑布<新装版 ルナル・サーガ> (角川スニーカー文庫)
- 作者: 友野詳
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/12/01
- メディア: Kindle版
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冒険の予感に満ちあふれた世界の設定、手に汗握る物語と魅力的な登場人物たちの葛藤と成長。
ファンタジー小説の楽しさをすべて詰め込んだシリーズ。
ライトノベルだけど、大作ハイ・ファンタジーとも言える。
4.吉田直『トリニティ・ブラッド』
トリニティ・ブラッド Reborn on the Mars 嘆きの星<トリニティ・ブラッド> (角川スニーカー文庫)
- 作者: 吉田直
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/05/25
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作者がなくなってしまったために、未完なのが悔やまれる、ものすごい密度のゴシックファンタジーSF。設定のことごとくが、中二病をくすぐるかっこよさなのに、実際の世界史や宗教学も踏まえていて、すごい。
5.堀田善衞『路上の人』
中世ヨーロッパを舞台にした硬派な歴史小説。
「どこの国にも属さない路上生活者」が主人公。教会に所属し、些細な教義の違いで泥沼の争いを繰り広げる聖職者と、何にもとらわれない主人公との対比が面白い。
6.芝崎みゆき『古代マヤ・アステカ不可思議大全』
世界にたくさんある神話の中でもいちばんマイナーでいちばん奇妙と言ってもいい、マヤとアステカの神話と遺跡について、全編手書き!という謎の情熱で描いた本。初心者向け&マニアックを両立。
7.乙一『きみにしか聞こえない』
きみにしか聞こえない ?CALLING YOU? (角川スニーカー文庫)
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/03/27
- メディア: Kindle版
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この短編集の中に収められている「しあわせはこねこのかたち」が、乙一の中でいちばん好き。乙一は、無理に風呂敷を広げず、狭い狭い世界の中での細かい部分を丁寧に描くのがうまいのだなぁと思う。
8.向山貴彦『童話物語』
まるではるかヨーロッパで昔から語り継がれきた幻想小説ではないかと思える、洗練された物語。タイトルから優しいおとぎ話を想像してしまうが、これでもかと主人公に襲いかかる運命はつらい。でも読み切る価値は、ある。
9.山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
世の中に数多ある文章術の本の中では圧倒的な出来だと思う。
「どんな体裁にすべきか」という表層的なことではなく、「文の目的を理解し、そのための方法を考える」という本質的な技術。
10.湯浅誠『どんとこい、貧困!』
中学生向けシリーズ本のひとつで、貧困論として、だけでなく社会学の入門書として素晴らしい本。
「原因と結果」は世の中で考えられているような単純なものではなく、もっと構造的だ、ということがわかる。
11.九岡望『エスケヱプ・スピヰド』
架空戦記、SF戦闘ロボット、青春群像劇、という要素を全て兼ね備えた素晴らしいライトノベル。
新しく登場するキャラクターと設定がことごとく魅力的で、読み進めるのが楽しくてしょうがない。
12.長野まゆみ『野ばら』
長野まゆみの小説は、言葉すべてが詩。透き通った文章は、読み進めるうちに魔法にかけられたような気分にさせてくれる。
通勤電車の中で読んでも、ひととき幻の世界に連れて行ってくれること間違い無し。
13.サン=テグジュペリ『人間の大地』
『星の王子さま』の作者として有名なサン=テグジュペリが、自分の人生を見つめて書いたエッセイ。まだフライトが危険な時代に飛行士として、常に死と隣り合わせにいながら星を見つめ続けた美しい文章。
緻密に作られた世界設定で、ファンタジーでありながら歴史小説のような重厚さをもつ大きな大きな物語。
シリーズの中では、人の思惑が交差する、皇太子チャグムを主人公とした『旅人』と名のつく作品が好き。
藤本ひとみの歴史小説は、世界観や政治的な大局の解説の部分と、人間の心情に寄り添った部分とのバランスがとてもよくて、難しすぎず没入できる。
この作品は、影のある主人公が非常に魅力的。
16.森達也『世界を信じるためのメソッド』
世界を信じるためのメソッド―ぼくらの時代のメディア・リテラシー (よりみちパン!セ)
- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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中学生向けで、うすくてすぐに読めるので、メディア・リテラシーの基本として、誰もが一度読んでほしい本。
「メディアが示すのは、事実のたったひとつの断面に過ぎない」
17.岡檀『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある』
周囲と比べて極めて自殺の少ない町にある「自殺抑制因子」は一体何なのかを丁寧に見極めようと試みた本。
まだまだはじまったばかりの研究だが、「生きづらさ」を解決する希望。
18.『日本の昆虫1400』
日本の昆虫1400 (1) チョウ・バッタ・セミ (ポケット図鑑)
- 作者: 高井幹夫,奥山清市,長島聖大,井村仁平,槐真史,伊丹市昆虫館
- 出版社/メーカー: 文一総合出版
- 発売日: 2013/04/15
- メディア: 文庫
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身の回りにいる昆虫が「なんていう虫なのか」を調べようと思ったら、この図鑑が最適。
よくある「平らに広げて真上から撮った」標本写真ではなく、白い背景にまるで生きているように載せて撮った写真が素晴らしい。
19.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
- 作者: J.D.サリンジャー,J.D. Salinger,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 新書
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ありがちで悔しいけど、主人公のホールデンは、とても他人とは思えない。
クソッタレなものであふれたこの世の中で、崖から落っこちそうになっている子供をキャッチするようなことがしたい。
20.瀬川昌男『星と星座の伝説 夏』
小学校低学年のときにおばあちゃんに買ってもらって、僕が神話マニアになるきっかけをつくった思い入れ深い本。
ギリシャ神話を中心に星の神話がたくさん。人間臭いゼウスやアポロンが好き。
21.内田樹『街場の中国論』
大人気作家、内田氏の本には当たり外れがある。ブログの記事をピックアップしただけの本は、論旨もストーリーもなくて面白くないが、本書のように大学の講義をもとに書かれたものは、考えるきっかけを与えてくれる。
22.豊島ミホ『リテイク・シックスティーン』
27歳の女が、過去にタイムスリップして女子高生をやりなおす。冴えなかった高校生活を充実させれば、未来はバラ色になるはず?!
エッセイ『底辺女子高生』と合わせて読むと、なかなか刺さる。
漱石の作品の中ではこれがいちばん好き。
高すぎる自意識をもてあました若造が、「くだらない世の中から離れよう」と隠遁生活を目指しつつ、寂しさから逃れることはとてもできやしない、と自覚する。身につまされる。
24.たつみや章『月神の統べる森で』
まさかの縄文ファンタジー!
縄文時代から弥生時代へ、ムラからクニヘと変わるその瞬間の、人々の心の揺れを丁寧に描く。透き通るように美しいシクイルケのたたずまいが、とても好き。
25.山本弘『神は沈黙せず』
SFは壮大なホラ話。風呂敷は、広げれば広げるほど面白い。
というわけで、B級オカルトものかと思いきや、「創造主たる神」にまで手を伸ばしてしまったから、さあ、たいへん。
「都市伝説」の頂点、みたいな話。
26.遠藤周作『イエスの生涯』
小説というべきか、神学というべきか。
カトリックのクリスチャンである遠藤周作が、自分なりの信仰を見出すために、「イエスとはどんな存在であったか」を探ろうとした本。「同伴者イエス」という結論。
27.山岸俊男『「しがらみ」を科学する: 高校生からの社会心理学入門』
「しがらみ」を科学する: 高校生からの社会心理学入門 (ちくまプリマー新書)
- 作者: 山岸俊男
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/11/07
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いじめが起こる原因は「悪人がいるから」ではない。いじめをするインセンティブを与えるしくみがあるからだ。社会の問題を「心」ではなく「しくみ」で読み解く。