ミニ小説
お題小説 おっぱい、望郷、薔薇、追憶 「宇宙旅行であなたの灰色の人生を薔薇色に!」とか言いながら、宇宙飛行士の制服に身を包んだ男がブロンドで巨乳の美女の肩を抱いてにやけている、なんていう広告を見かけたとき、そりゃあ俺だって、うさんくさいな、…
雨が音もなく降る夜は、誰だってセンチメンタルな気分になる。私にとってもそれは例外じゃない。いつだって暗く沈みこんでいる私に、センチメンタルなんていう感情は似つかわしくないかもしれないけれど。 私は部屋のガラス窓を小さく開けて、暗闇に閉ざされ…
お題:遊び、酒、塗る、雪、夜、熱い ――寒い、寒い、寒すぎる。 そんなことを考えてもしょうがないと思うのに、ふと気づけば頭の中ではそればかりをつぶやいていて、オレは乱暴に頭を振ってその言葉を脳内から追い払おうとする。ほら、よく言うじゃないか。…
お題:茶 雪 雷 魔王 珈琲 仮面 制限時間:1時間(30分ほどオーバー) 「この森には、魔王がすんでいるんだぜ」 テレジアがフランツという少年からそんな話を聞いたのは、その日の昼下がりのことだった。 「魔王はいつも仮面をしていて、素顔はだれも見たこ…
お題:毛根、品質保証マーク、技師、運河、小切手、救い手 自分が、救い手であることを自覚したのは45を超えた頃だった。 欲を言えば、もう少し早くに自覚したかったと思う。こう見えても若い頃はそれなりに容姿に自信があり、「イケメン」なんて呼ばれた頃…
お題:珈琲、忘れ物、バグ、指輪、タブレット、カーテン、絵本、星空 うかつにも、教室に忘れ物をしてきてしまった、ということにミキが気づいたのは、もう真夜中に近い頃だった。 日頃の例に漏れず、寄宿舎の寝台の上で、寝付かれぬ夜を悶々と過ごしていた…
aiko「鏡」より 午前中の太陽が射し込む部屋の中で、オマエはオレに背中を向けたまま、黙って荷物を整理してる。 オレはマンガを読むふりをしながらオマエの背中と、たまにのぞく横顔を見つめてる。今日この部屋を出て行っちまうオマエの顔を、少しでもこの…
バンプオブチキン「ベル」より 最終電車が駅に滑り込んでくる、ごおっという音が、人影もまばらな深夜の地下鉄駅に低く響く。 真夜中の地下鉄の駅や車内は、外の暗さとの比較のせいか、妙に明るく見える。作り物の明るさ。青白いその光を、浴びる者さえ少な…
aiko「milk」より 始まりは夢の中だった。 ――雪? 思わず口にしたつぶやきは、音にならずに白い世界に溶けていく。 それは何もかもが真っ白な世界だったんだ。音もなくて、時間が止まったように思えた。 ――だれ? 夢の中で、あたしは身構える。こんな静かな…
今は遥か忘れ去られた太古の昔、我々人類が持つ歴史よりも遙か彼方の時代。 アトランティスと呼ばれる大陸があった。 そこには超古代人による帝国があり、今では想像すらできぬほどの、高度な文明が発達していたという。 彼らはあろうことか、老化を完全に止…
それは、星降る聖夜の、翌日の物語。 「ねぇ、何をしているの?」 ボクがたずねると、ほうきをもったおにいさんは、ふんわりとほほえんだ。 「おかたづけだよ。星くずを、はきあつめているんだ」 「星くず?」 「そう、ながれ星がおとしていったちいさなカケ…
冬の海には近づくな。 浪浜村に住む子供たちで、そう言われたことのない奴はいない。 冬の海には魔のモノが棲む。決して近づいてはならないよ。 今年死んじゃった俺のばあちゃんも、木枯らしが吹いて冬がはじまった日には毎年決まって囲炉裏のところに俺たち…
お題:「幹線道路」 一面の畑以外何もなかったこの村に、王都と港町を結ぶ巨大な幹線道路ができたのは、つい去年のことだった。王都や近隣の町から大勢の労働者や職人たちが派遣され、瞬く間に田畑を埋め地面を馴らし、その上に石畳を敷き詰めて、のどかだっ…
BUMP OF CHICKENの『ハンマーソングと痛みの塔』を聞いていたら、 思わず書きたくなって勢いで書きました。 ちょっと内容が、賛否両論かもしれませんが、やっぱり勢いで載せてしまおう。 不快になったらごめんなさい。 不快にさせることが、本意ではないです…
BUMP OF CHICKEN『メーデー』より 夢の中であいつの泣き声を聞いた。 あいつが泣いたところなんて実際には一度も見たことないのに。 あいつはいつも笑ってる。どんなに悲しいことがあっても、さびしい時や苦しい時も、少しだけ首を傾げて、困ったような顔で…
お題:秋の夕暮れ 「寂しさは その色としもなかりけり 槙《まき》立つ山の 秋の夕暮れ」(寂蓮法師) 「心なき 身にもあはれは知られけり 鴫《しぎ》立つ沢の 秋の夕暮れ」(西行法師) 「見渡せば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」(藤原定家…
使用お題:蝉時雨 夏の太陽の下、境内は蝉時雨に包まれていた。 深い森の真ん中をほんの少しだけくりぬいたような、神社の境内。 青々と葉をつけた高い木々に囲まれて、昼間でありながら太陽の光は遮られ、緑色の木漏れ日となって僅かに注ぎ込むのみだ。 い…
使用お題:花火 普段は人影もまばらな公園に、今日は数え切れないほどの人が集まっていた。 誘われて来た、大学の近くの地元の花火大会。もっと小ぢんまりしたのを想像してたけど、思ったより本格的だ。地元の企業が協賛して一千発も花火を打ち上げるらしい…
使用お題:「入道雲」 「うわぁっ! むっちゃくちゃでっかいソフトクリームや!」 夏休みに入ったばかりの日、盛大に湧き出した真っ白な入道雲に、太一は歓声を上げた。 「あはは! タイッチャンはいつも食べもんのことばっかりやな!」 弾けるような真菜の…
日付が変わる頃には雪になるでしょう、なんて、そういえば昨夜のテレビニュースで聞いたような気がするけど、聞きなれないその言葉は僕の頭を素通りしていって、気にも留めていなかった。 目が覚めてカーテンを開けると、雪が降っていた。 「目が覚めたら一…
まだ残暑厳しい8月の昼下がり。 波打ち際に腰を下ろして水平線をみつめている渚の背中に、俺はそっと声をかける。 「こんなところで何してんの?」 「世界を救ってるんだ」 振り向いた渚が、さも当然といった表情でそう答えたから、俺は一瞬、冗談を言って…
朝目が覚める。 僕は洗面台へ行き、蛇口をひねる。 水の粒が、一筋の直線となって流れ出、僕の手を濡らす。 僕は透き通るそれを手のひらですくい、指の隙間から水を滴らせながら持ち上げて自らの顔にかける。 水の音に混じってかすかに聞こえてくるラジオか…
帰ってきて、珈琲を淹れる。 インスタントではない。ペーパードリップのレギュラーコーヒーだ。 薬缶を火にかけて、湯が沸くまでの間に珈琲豆を手動のミルに入れ、ハンドルを回す。 ゴリゴリと小気味のよい音がして、豆が細かい粉末になってゆく。 一人分の…
とてもあたたかな太陽が、地上のすべてを照らしていた。 さわさわと揺れる草原のほんのかたすみに、僕はいる。 赤や黄色や青色の鮮やかな花ならよかったのに、ひっそりと目立たない真っ白な、小さな花が僕だった。 さわさわ、さわさわと風が鳴る光り輝く草原…
時々不意に生きていることが恐ろしくなって、暗い闇の中に飛び込みたくなることがある。 それは、灼けたアスファルトの道に、空っぽになったセミの骸が転がっているのを見たときだったり、どこかで自分と同じ歳の人間が無残に切り裂かれて殺された事件をTV…
カツミは、ある街の少年野球チームに参加していた。一年生から六年生まで、町内の小学生を集めた小さなチームだ。 正直言って彼の参加するチームは弱い。たった十チームしか参加しない地区大会でも、一回戦に勝てるかどうかというところだった。 カツミには…
明日は運動会だ。 コウタは今日何度目になるかわからない盛大なため息をついて、憎らしくなるくらい真っ青な空を見上げた。 雲ひとつない秋晴れの空。天気予報によれば、今日から一週間、毎日が快晴らしい。もちろん、明日も。コウタは一ヶ月前から毎日天気…
僕には幼い頃から、他の人には見えない小さな友達がいた。 彼の名前はコロといった。本人曰く、「わしの名前はコロポックルなのじゃ。ほえ~ん」だそうだが、僕はめんどくさいのでいつも「コロ」と呼んでいた。 ちょっとだけ辞書で調べてみたら、コロポック…
身を切る寒さは、自分が生きているということを思い出させてくれるから好き、と彼女が言ったのは、街がクリスマス色に染まった、去年の十二月のある日のことだった。あの時僕は、何言ってるんだよ、寒くなくったってちゃんと生きているって感じられるだろ、…