僕が生きていく世界

人と少しだけ違うかもしれない考え方や視点、ぐるぐると考えるのが好きです。 あくまで、僕個人の考え方です。 みんながみんな、違う考えを持っていていい。 いろんなコメントも、お待ちしてますよ。

レビュー 九岡望『エスケヱプ・スピヰド』

ジャンル:SF、あるいはファンタジー
おすすめ度:☆☆☆☆☆(5/5)

ようやく、電撃文庫にこういう作品が戻ってきた。
感慨深くなるほど、王道アクションファンタジー

戦争によって日本(作中では八州、という)が壊滅した20年後、
荒廃した世界で生き抜く人々の物語。
主人公は、軍の最終兵器であった、昆虫型戦闘機械「鬼虫」の生き残り。
ターミネーターよろしくの、サイボーグ的なキャラクターだ。
撃墜されて活動を停止していたが、20年間の冷凍睡眠から醒めた少女によって再起動され、
その際に少女を「司令」に仮登録する。
健気で真っ直ぐな少女を守る、最強の兵器。

設定は王道。
ただし丁寧でよく整理されているため、とても感情移入がしやすい。
そして、とにかく素晴らしいのがその文章力。
情緒的な文章と実用的な解説の絶妙なバランス。
読み手の「体感速度」を自在に操る、戦闘描写。
不器用で偏ってはいながらも、それぞれが「ご都合主義」な「キャラクター」ではなく、
ひとりひとりの「人間」であり、「人生」を想像させる、登場人物たちの心情。

王道として、勘所を外さない世界設定も秀逸だ。
蜂や蜻蛉の形をした兵器「鬼虫」がすごくいい。
虫の形状を活かしたそれぞれの特性や、「電磁制御」「神経加速」といった、機体ごとの能力。
今後のシリーズ展開にも期待できる魅力的な仕掛けだ。

とにかくも、期待の新シリーズ、そして新しい作家さん。
「新刊が出たらすぐに買いたい」と思えたライトノベル作家は、10年ぶりくらいかもしれない。