僕が生きていく世界

人と少しだけ違うかもしれない考え方や視点、ぐるぐると考えるのが好きです。 あくまで、僕個人の考え方です。 みんながみんな、違う考えを持っていていい。 いろんなコメントも、お待ちしてますよ。

風野潮『マジカル・ドロップス』

42才の主婦が、2時間17分だけ15才に戻れる、
魔法のドロップを手に入れて――。
というお話。
平凡な主婦だった主人公が、15才だった時の夢を思い出して、
自分の息子がいる(!)バンドのボーカルとして飛び込んでいく。

全体的に可愛らしくて微笑ましい、
「ビート・キッズ」を彷彿とさせる作品。

ありがちな設定ではあるけど、
巧みな構成と丁寧な心情描写がいい。

潮さんの作品は、客観的に、というか
俯瞰的に見ると思わず削ってしまいそうな
「取るに足らない小さなこと」を、
あくまでも一人称の主観で、細かく丁寧に描写しているから、
自分とはまったく違う立場の主人公に、深く感情移入できる。

一言で言ってしまうと風野潮さんはたぶん、「日常」を書く作家。
最近の、突飛なエピソードで売る小説とは対極で、
地味ではあるけれど心の深いところに届く。

42才と15才の心情をうまくかき分けるのは、
さすが潮さんならでは(笑)。

ひとつだけ気になったのは、
明らかに「敵」として出てくる先生の存在。
子どもにとって、時に先生は「敵」になってしまうけれど、
大人である親の視点からは、先生の立場や考えに、
理解できるところを探せなかったのかなぁ。
先生が本当に意地悪のためだけに生きているとは思えないし、
潮さんの作品の中で際立って悪人、という印象のある彼女が、
妙に気になってしまった。