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レビュー マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル
早川書房


おすすめ度:☆☆☆★★(3/5)

すごく良いところと、期待はずれなところと両方があったと思う。
とにかく、文章はうまくて非常に読みやすかった。

前半はほとんどサンデル氏の思想は出てこなくて、
いわゆる「正義論」の歴史的な流れや、各論を実践的な場に引き出した場合にどうなるのか、
という思考実験を丁寧に書いている。
このあたりの部分は非常に勉強になって面白かったし、
たくさんの読者がこうした問題について思いをめぐらせる、というだけでもとても価値があると思う。
「道徳をめぐる考察は、具体的状況における判断と、
そうした判断の土台となる原則の間をいったり来たりする弁証法的プロセスを踏むべきものである」
というのは「哲学」を机上の空論にしない、重要な提案であると思う。

後半になるとサンデル氏のいう「コミュニタリアニズム」や「共和主義」の思想が出てくるのだけれど、
ここについては、正直言って全く同意できなかった。
とくに「忠誠のジレンマ」についてはことごとく反発を覚えてしまった。
「反奴隷制を掲げるリーが、自分の所属するヴァージニア州への義務感から南部の軍を率いて戦った」
という話を、「彼のジレンマを生んだ忠誠には敬服せざるをえない」などといわれても、
正直言って少しも共感はできなかった。

従来の思想についての批判は現実的で冷静なのに、
持論については「可能だと、私は思う」とか「やってみないことには、わからない」などと
夢見がちとさえ言えそうな姿勢で、説得力の欠片もないことが、すごく残念。

「政治を考えるのに、道徳的な問題を全く避けて通るということは不可能なのではないか?」
という問いまではとてもよく分かる。
そこから先については、まだまだ暗中模索としかいいようがない状態であるようだ。