僕が生きていく世界

人と少しだけ違うかもしれない考え方や視点、ぐるぐると考えるのが好きです。 あくまで、僕個人の考え方です。 みんながみんな、違う考えを持っていていい。 いろんなコメントも、お待ちしてますよ。

石井光太『神の棄てた裸体』

ジャンル:ドキュメンタリー

著者が肌で体験した、異国の性と生の現実。
本書の中には十六のエピソードが書かれており、
それぞれが我々の想像を絶する、
異国での現実の光景をありありと描き出している。

体験記の中には主人公として著者自身が登場しており、
著者は冷静な観察者に徹することなどなく、
取材対象である女性たち(時に男性)の人生に関わっていく、
あくまでも一人称のドキュメンタリー。
それ故に、純粋な「事実」としての現実を、我々に伝えてくれる。
それは普遍でも、平均でもない、ただの一事実。
善とか悪とか、賢いとか愚かだとかいった、
「客観的な判断」などとは切り離されたところに事実はある。
誰がなんと言おうと、今この瞬間、
彼女たちはその現実の中に生きている。
そういうことを改めて思い知る本だった。

だからこそ、この作品に不必要な予断をもたらす可能性のある、
イスラーム」という言葉はいらなかったのではないかと思う。
確かにここに取り上げられている人々はみな、
イスラームと関わりがある人たちではあるが、
地理的・思想的にも大きく離れていたりして、
現代の一個人にしてみればなんの交流関係もない。
むしろ共通点は「貧困」というべきであり、
彼女たちの置かれている状況にイスラームの戒律が
密接に関係しているものはむしろ少数であると言える。
それぞれのエピソードを強引に
イスラーム」という共通点で結んでしまったがために、
読者に「イスラーム=貧困」、
あるいは「イスラーム=過酷な性」という安易なイメージが
定着してしまわないかということだけが気にかかる。9s