レビュー 牛窪恵『恋愛しない若者たち』
恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 (ディスカヴァー携書)
- 作者: 牛窪恵
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2015/09/29
- メディア: Kindle版
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「若者たちが恋愛しない理由は、社会そのものにある。本人を批判するのはおかしい」
と指摘していて説得力がある。
一方で、あくまでもバブル世代の大人たちに向けた本という感じで、
著者がいわゆる「バブル世代の成功者」なので、
「自分達の時代は恋愛はとても楽しいものだった。それを知らない若者は可哀想」
という視点なのはなんともモヤモヤする。
僕からするとバブル期の希望に裏打ちされた生き方って、覚醒剤でハイになっていた状態みたいにも見えるなぁ。
「多大な恋愛リスクや不良債権が露呈したいま、もし彼らに「怖がるな」「思い切って恋愛してみろ」と言うなら、失ったものを取り戻せる社会、底辺からでも這い上がれる社会を、大人たちが中心となって創り上げていく必要があるはずだ」(本文より引用)
ここには深くうなずいた。
特に「おわりに」がよかった。
「いまの若者は、ていのいい自己責任論を振りかざし、何もしてくれない大人たちにうんざりし、「せめてリスクだけは減らそう」と恋愛にまで背を向け始めた。一方で、不安な時代だからこそ、誰かと連帯する経済的・心理的メリットを痛感している」
この本で取り上げられている、
フランスの「パックス」とスウェーデンの「サムボ」の制度はすごくいいな、と思う。
日本では「まともな人間ではない」と扱われるような人たちを、公的に承認する制度。
正直言って社会の成熟度の格が違うんだなぁと感じた。
未来を見据えているか、目をふさいでいるか。
読んでよかった。なかなか考えさせられる本。
しかし、未来は実感的にかなりきびしいなぁ。ちょっとどんよりする。