僕が生きていく世界

人と少しだけ違うかもしれない考え方や視点、ぐるぐると考えるのが好きです。 あくまで、僕個人の考え方です。 みんながみんな、違う考えを持っていていい。 いろんなコメントも、お待ちしてますよ。

湯浅誠『どんとこい、貧困!』 (よりみちパン!セシリーズ)

これはすごい本だ。
さまざまな社会的なテーマを、中学生にも分かるように書いた、
理論社の「よりみちパン!セシリーズ」。
これは本当に素晴らしい本が多くて、
とても注目していたのだけど、この本は特にいい。
というか、中学生だけが読むなんてもったいない。
中学生から専門家まで、あらゆる人が読むといいと思う。

世の中はイスとりゲームのようなものだ。
イスから転げ落ちた人々が貧困になる。
「自己責任論」は「座れなかったヤツに問題がある」という考え。
だけど、「イスの数が少なかったのが問題だ」と
考えるべきじゃないのか?と湯浅氏は問題提起をする。
パン!セシリーズで僕がすごいと思うことは、
「中学生に向けて書く」ということの影響力の大きさを
著者がきちんと意識していて、
「自分の文章で中学生を言いくるめてしまわないように」、
ものすごく抑えて、いつも以上に内省的・自己批判的に
文章を選んでいるところだ。

この本は特に、前半がいい。
世間で非常によく言われている「貧困に対する反論」を、
質問形式で並べ、それにひとつひとつ答えている。
「努力しないのが悪いんじゃないの?」
「甘やかすのは本人のためにならないんじゃないの?」
「死ぬ気になればなんでもできるんじゃないの?」
「自分だけラクして得してずるいんじゃないの?」
「かわいそうだけど、仕方ないんじゃないの?」
どれも、メディアで聞き飽きた「自己責任論」の常套句。
それぞれへの答えが、ひとつひとつ丁寧で共感でき、
きちんと読者を考えさせるようにできている。

人間は実は公平なんかじゃない。
能力を発揮するための「溜め」が、それぞれ違う。
「溜め」の量によって、同じ努力でも結果の大きさが違う。
結果からさかのぼって努力の量を類推する「自己責任論」では、
この「溜め」の要素を無視しているのだ。

はっとさせられたのは、
「労働条件が悪くなる→貧困が増える→NOと言えない労働者になる
→社会全体の、労働条件がずるっと下がる」
という「貧困スパイラル」。
まさしくそういうことが社会ではものすごい勢いで進行していて、
「誰もが不幸になる社会」への道を突き進んでいることを、
肌で感じている。

僕も中学生の時にこの本に出会いたかった、と思う。
でも、今出会えてよかった、とも思う。
いつからでも遅くない。ぜひ読んで、自分の頭で、考えてほしい。