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人と少しだけ違うかもしれない考え方や視点、ぐるぐると考えるのが好きです。 あくまで、僕個人の考え方です。 みんながみんな、違う考えを持っていていい。 いろんなコメントも、お待ちしてますよ。

レビュー niccoメジャーデビューアルバム『最前線』

nicco公式サイト
※試聴や動画も見られます。

9月22日に発売された、niccoのメジャーデビューアルバムのレビューを、ようやく書こうと思う。
こんなに遅くなってしまったのは僕自身が忙しかったからとか、怠け者だからってこともあるけれど、
それだけじゃなくて、このアルバムをはじめに聴いたときに
「あ、これはするめソングばかりだな」と感じたからでもある。
「噛めば噛むほど味が出る」するめのように、「聞き込むほどにその良さを感じる」曲のこと。

niccoのデビューアルバム「最前線」はまさしく、
何度も聴き込むことで、そこに込められた想いの厚みを知ることができる「するめアルバム」だ。
確かに今まで彼女が歌ってきた曲に比べるとキャッチーではあるけれど、
時代のニーズに合わせたど真ん中の曲、という感じはあまりしない。
それはきっと、このアルバムが伝えようとしている標的が、
「今」という瞬間にではなく、もっと長い時間、あるいは「人生」や「人間そのもの」にあるからなのかもしれない。

聴いてみて驚くのは収められている曲のバリエーションの豊富さだ。
5曲それぞれ、少しも似たところがなくて、まるで別々のアーティストの曲のように思うほど。
元気いっぱいな、ライブにぴったりの王道ロック、「最前線」。
若い女の子らしい、等身大のかわいらしいポップなラブソング、「こいのうた」。
一昔前の女性ロック歌手のような気怠い歌い方の、「ロックンロールボーイ」。
いたずら心たっぷりの余裕を見せつける、キャッチーなアイドルの曲のような「委員長」。
そして、シンプルな構成の音楽で、飾らない裸の心を綴る「22歳」。

これだけさまざまな曲を、niccoは全て違う歌声で、完全に歌いこなす。
前のCDのレビューで僕は「niccoの声はずるい」と書いたけれど、
何よりも自分の声を使いこなして思いを届ける"表現者"としての、niccoの技術は突出している。

しかも、niccoは「シンガー」であるだけではない。
あくまでも彼女は「シンガー・ソングライター」なのだ。
それぞれまったく違うタイプに思える5つの曲は、それでもバラバラなわけじゃない。
全ての曲はniccoという「人間」を通じてつながっている。
等身大な一途な気持ちも、強がって格好つける姿も、
ずるく微笑む小悪魔的なところも、自分とみんなを鼓舞してはしゃぐのが大好きなのも、
そして、自信がなくて立ちすくんで「まだここにいたいよ」と叫ばずにはいられないのも、
全ては同じ一人の人間なんだ、ということを、このアルバムに収められた曲たちは声高に叫んでいる。

このアルバムは、niccoの自己紹介だ。
わかりやすいキャッチコピーをつけた「商品」としてではなく、
とても一言では言い表せない矛盾だらけで、ぐちゃぐちゃした感情をあわせもった、
niccoという「人間」の心の様子をできるかぎり詰め込んだ、自己紹介。
短い流行では終わらない、というniccoの執念が、これからの可能性が、ここに詰まっている。
これをデビューアルバムとして出してくれたスタッフに感謝したい。
そして、10年後も20年後も、自分だけの音で、言葉で、
新しい音楽を生み出し続けることになるはずのアーティストniccoの誕生を、心から祝福したい。

最後に、前のレビューにも書いた言葉を、もう一度繰り返そう。
「niccoは僕らの前にいるんじゃない、となりにいるんだ。」
僕らと一緒に歩いてくれるアーティスト、自信を持ってみんなにお勧めするよ。